株式会社コスモテック 宇宙こぼれ話

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ある勇者達の話(第10回)

ある勇者達の話

 今から40年以上も前の話ですが、ロケット打上げ作業におけるある勇者達の話を書いてみましょう。
 1975年9月9日(火)の14:00を目標にN−I(エヌイチ)ロケット初号機の打上げ準備をしていたときの話です。

 N−Iロケットの第1段の燃料はRJ-1(ケロシン系)、酸化剤は液体酸素(LOX)です。RJ-1は打上げ日以前にロケットに充填されており、打ち上げ当日に充填するのはLOX(ロックス)でした。

 LOXは地上にある貯蔵タンクに保管されており、その貯蔵タンク内の頭部へ窒素ガス(GN2)を吹き込み、中にあるLOXの液面を加圧する(押す)ことによりその圧力で配管内を流れて行きロケットタンクに充填される仕組みです(この方式を加圧圧送方式と呼び、簡単なブロック図を次に示します。)。

図 LOXピット

 その加圧用のGN2は元々圧力が高い(約150気圧)ためそのままでは使用できず調圧弁(レギュレーター)で圧力を低くして(約6気圧)貯蔵タンク内に充填する(吹き込む)のですが、打ち上げ当日の貯蔵タンク加圧作業が計画通りには実行できないと言う不具合を起こしました。つまり、ロケットに酸化剤であるLOXが充填できなくなったのです。

 既に射点(ロケットを打ち上げる場所)回りは危険区域となっており立ち入り禁止です。LOX貯蔵タンクもその危険区域内にありました。

 しかし、なんと決死隊が組織されLOXピット(上記LOX貯蔵タンクや調圧弁などのシステムが設置してある、地上より数メーター低くなった場所)へ調査に向かいました。その決死隊の人達の原因究明により、不具合は調圧弁を含む調圧システムが上手く作動しないことであると判断し、調圧弁使用せずに手動弁の開放度の調整でLOX貯蔵タンクの加圧を実施したのです。

写真 N-Tロケット

 LOXピットの中には、打上げ準備作業などでLOX放出筒に排出されたLOXがほぼ満杯になっており、そこへ今回の不具合処理で更にLOXが廃棄(排出)され、放出筒の上からあふれたLOXが雨のように降ってきたのです。
 遠隔モニターテレビでブロックハウス(打上げ当日の遠隔操作を行う場所)から見る人達には、LOXピットは濃い霧で覆われてなにも見ることができません。
 そうこうしているうちにその霧の中から、一人また一人と霧を体中にまとった決死隊の面々が現れ、こちら(ブロックハウス)の方へ歩いてきました。
 みんなが安堵した瞬間でした。また、その姿のなんと格好良かったことか。なにしろその霧は、酸素をふんだんに含んだ霧ですので、少しでも発火源があれば決死隊はあっという間に燃えてしまうのですから。
 彼らこそ勇者だとそのとき私は思いました。まるで「風の谷のナウシカ」の腐海から現れた人のように。

 このようなことは今の打上げでは考えられません。まさに液体ロケットの黎明期のことだから許されたのでしょう。

 打上げは30分遅れの14:30に行われ、人工衛星を積んだ日本初めての液体大型ロケットは成功したのです。

 

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