ロケットの打上げ延期の理由は?
宇宙開発事業団(NASDA)時代から今日の宇宙航空研究開発機構(JAXA)にかけての人工衛星打上げ用液体ロケット(液体の燃料と酸化剤を用いたロケット。固体ロケットと対比される。)での打上げ延期の理由についてご披露します。
打上げが延期される理由は数々ありますが、大きく分けて次の4つに絞られます。
・ロケットの不具合・修理のため(ロケット関連設備を含む)
・人工衛星の不具合・修理のため(人工衛星関連設備を含む)
・荒天(雨、風、雷等)のため
・安全確保のため(打上げ時警戒区域への船舶の侵入等)
これまでの大型液体ロケットは、6種類打ち上げられてきています。
N-Iロケット | 1975年~1982年 | 打上げ機数7機 |
---|---|---|
N-IIロケット | 1981年~1987年 | 打上げ機数8機 |
H-Iロケット | 1986年~1992年 | 打上げ機数9機 |
H-IIロケット | 1994年~1999年 | 打上げ機数7機 |
H-IIAロケット | 2001年~(運用中) | 打上げ機数30機 |
H-IIBロケット | 2009年~(運用中) | 打上げ機数5機 |
これらのロケット(打上げ機数合計66機)における打上げ延期理由は次の表の通りです。
ロケットの種類 | 遅延日数 | 遅延理由別日数 | |||
---|---|---|---|---|---|
(平均) | 天候 | ロケット | 衛星 | 安全 | |
N-Iロケット | 8.0 | 1.6 | 5.6 | 0.7 | 0.1 |
N-IIロケット | 5.1 | 1.0 | 0.9 | 3.2 | 0.0 |
H-Iロケット | 11.3 | 2.2 | 9.1 | 0.0 | 0.0 |
H-IIロケット | 28.0 | 0.4 | 11.6 | 16.0 | 0.0 |
H-IIAロケット | 7.7 | 1.4 | 4.0 | 2.3 | 0.0 |
H-IIBロケット | 1.0 | 1.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
上記全機種 | 9.6 | 1.4 | 5.0 | 3.2 | 0.0 |
打上げ日の延期に関することをまとめると次の通りです。
- ・当初の打上げ予定日から約10日の遅延が平均で起こる。但し、現在運用中のH-IIAロケット及びH-IIBロケットはこれを下回る。
- ・ロケット及び衛星系の理由による延期が優位を占める。最も比率の高いのが設備を含めたロケット系の原因によるもの。天候による延期は少ない。
- ・なお、現在運用中のH-IIAロケットについては、打上げを失敗した6号機のロケット系トラブルによる延期(80日)を除けば(上記表では4.0日となっているものが)約1.3日となる。
- ・H-IIBロケットの打上げ延期は天候によるもののみで、このことからロケット及び(これまでは常に)そのペイロードであったHTV(宇宙ステーション補給機「こうのとり」)各々のハードウェア・ソフトウェアの安定性が解る。
- ・また、H-IIAロケットもここ11機は連続してロケット系の理由での延期は0日である。天候による延期は、全機種平均と同じ約1.4日。
- ・安全(地上安全、海上安全)に係る打上げ延期は1度あったのみ(1976年)。但し、打上げ時刻遅延への影響は数度あった(1977年、1994年、2002年、2008年、2015年)。
いずれにしてもここ数年の打上げについては非常に安定しており、予定日の予定時間打ち上がることが非常に多くなっています。
予めの打上げ計画を調べて、旅行と打ち上げ見学を兼ねてみてはいかがでしょうか? 万一打上げが延びても、最近のデータによると1泊程度増えるだけです。