「ロケット発射場の話(5)」
3. 世界の発射場(続) 【脱線2】
今回は、現在は人工衛星打上げには使われていないが歴史ある「過去」を持つ3ヵ所の発射場、および新たに「登場」したニュージーランドの発射場を紹介します。
(1)ウーメラ試験場
ウーメラ試験場は、オーストラリア大陸の中央南部から北~北西方向に広大な砂漠地帯が広がっている地帯を利用したものである。(東方向へは打ち上げない)
イギリスは1950年台からオーストラリアのウーメラ試験場で液体ロケット(ミサイル)の開発を行っていた。そのロケットを第1段とした、最初の欧州宇宙機関(ELDO)のヨーロッパロケット(中型ロケット)は1964年から試験飛行が始まり、1968~70年の3回の人工衛星打上げはすべて失敗した。しかし並行してイギリス単独で開発された小型ロケットのブラックアローが1971年に1度人工衛星打上げに成功した。それ以降は人工衛星のための打上げは行われていない。
また、ウーメラ試験場からは、1967年にオーストラリアの人工衛星が米国のスパルタロケットで打ち上げられているが、このロケットは第1段に米国最初の人工衛星および有人宇宙船(弾道飛行)を打ち上げたレッドストーンロケットを使用したものであった。
さらに、ウーメラ試験場と言えば、2010年に小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰ってきて小惑星イトカワで採取した物質のカプセルを着陸・回収した場所として有名であるが、ALFLEX(宇宙往還機のための自動着陸実験機;1996年)、NEXST-1(超音速実験機;2002年および2005年)の実験を行った場所でもある。(NEXST-1はロケットにより地上から打ち上げる方式で、ランチャーは日本から輸送して設置したラムダロケット用ランチャであった。下記発射場写真参照)
写真 ヨーロッパⅠ型射点
(2)アマギール発射場(アルジェリア)
フランスが1947年以降ミサイル・ロケットの開発・実験に使用し、1965年世界で米ソに続く3番目の人工衛星打上げに成功し1967年まで使用した発射場である。モロッコとの国境近くにあり、東(~南)方へ世界最大のサハラ砂漠が拡がっている。(リビアとの国境までで約2000kmある)
写真 アマギール元発射場位置
写真 ディアマンロケット射点
(3)サンマルコ発射場
ほぼ赤道直下で、東方にインド洋が開けたケニアの沖合いに建設され、シーロンチが出来るまで世界唯一の海上の人工衛星発射場(石油プラットフォームを改造した固定式)であった。
1964年から小型ロケット打上げを開始し科学観測を始めとして、米国との技術協力によりスカウトロケット(全段固体)により1967~1988年の間に衛星の打上げを合計9回行った。当時からイタリアは固体ロケットの開発もやっていて、「スカウト2」として続ける構想もあったようだが、結局廃却された。(ヨーロッパの固体打上げロケットとしては現在のベガロケットに至っている流れ)
写真 サンマルコ海上発射基地とスカウトロケットの打上げ
英国、フランス、イタリアそれぞれ1960年代に独自のロケット打ち上げ活動をしていたこと、その後欧州共同のヨーロッパロケット→アリアンロケット→ベガロケットに至る各国の対応などを象徴する「発射場」の脱線話でした。
(4)Mahia発射場
2016年9月に発射台が設置され開所した、ニュージーランド北島の東側に南向きに突き出た南緯39度にあるMahia半島先端(Kaitorete崎) Onenui Stationの発射場である。米国ベンチャーRocket Labが液体燃料で人工衛星を打ち上げる小型のエレクトロンロケットを開発し、同12月現在、液体エンジンの認定試験が完了し、米国とニュージーランドの許可が出れば打ち上げる、というニュースが流れている。打ち上がれば、1988年以来の南半球からの衛星打ち上げとなります。
写真 発射場の位置と発射台の据付作業
【出展:ウーメラ試験場(2006年JAXA「小型超音速実験機基本設計結果について」】
【出展:Encyclopedia Astronautica】
【出展 ISASニュースNo.29より】